◇「兵舎泥棒」トバイアス・ウルフ/迫光訳/彩流社
(「The Barracks Thief」Tobias Wolff)
数年ぶりの再読。作者はO.ヘンリー賞を何度も受賞した
短篇の名手。ベトナム戦争時代の米軍での寮生活が
描かれてます。主人公はドロボーなのだけれども、
兵隊が皆それぞれの哀しみを抱えている様がさらりと、
そしてじんわりと。。
以下訳者の迫光氏による「あとがき」から。
“何気無い日常を、醒めた眼差しと職人的なまでに
洗練された筆致で描き出す一方、それがどこか古風で
微視的なモラリティに裏打ちされているといった点などは、
両者(A.チェーホフとT.ウルフ)に共通した特筆だろう。”
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◇「沈みゆく女」ローラ・カシシュケ/古川 奈々子訳/角川書店
(「Suspicious River」Laura Kassischke)
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「はじめてお金のためにセックスしたのは9月だった。」
とつぶやくようにはじまる物語は、24歳の人妻が主人公。
1年の半分以上が白銀の世界に閉ざされるミシガン湖畔の
ある田舎町が舞台。ひもとかれていく壮絶な家族の秘密。。
女流詩人でもある著者が削ぎ落とした文体で紡ぐ哀切で
美しい世界は映画にもなったようですが。
岡崎京子「リバーズ・エッジ」にも通ずるものがあるような。
これは郊外文学といっていいでしょう。
群れからはぐれるとは、どういうことなのか?
はたして堕ちていくしかないのか?
渡りの準備で湖に休む白鳥たちを人間社会に
オーバーラップさせ、人間の業を深く鋭く描いてます。
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著者が「ラディゲがとても好きで「肉体の悪魔」を何度も
読み、本を書いた」と何かのインタビューで語っていたので
どれどれと手に取ったしだい。30分ほどで読了。
年上の女教師と年下の男子生徒の不倫といったら
それまでだけど、年月の推移を前提にした男女の心の
うつろいはまさしく「肉体の悪魔」を思わせます。
高橋源一郎氏が「あとがき」で誉めてました。
>(主人公の)「オレ」は半ば女性である。
>(著者の)「ナオコーラ」が半ば男性であるように。
>そしてそのことが救済であるとこの小説は語っている。
つまり作者も作中人物もジェンダーを越えていて
「女流文学」でも「男性文学」でもない立ち位置に
この作品の価値があるようナノダ。
映画化も決定とか。キャスティングが楽しみです。