怒涛のように藤沢周平を読了している。特に『蝉しぐれ』
『海鳴り』はドストエフスキー『罪と罰』に比す余韻。すばらしい。
藤沢作品の登場人物はいずれも藩命や陰謀、誤解や事件、事故、
許されぬ純愛など大きな運命に翻弄される日陰のひとびと。
若くして妻に先立たれる悲劇を心の奥底に宿している氏の、
人間へのやさしく、深い情感がどの作品からも香ってきます。
“そうしていがみ合ったり、笑ったりしながら生きて行くのが、 人間のしあわせというものではないだろうか。そういう平凡で、 さほどの面白味もない、時にはいらだたしいようなものが、 じつはしあわせというものの本当の中身なのではないだろうか。 とすれば家は、不完全ながらやはりしあわせの容れ物なのだ。 憎みもするが、和解もまたすばやくやってくる。 家の中の不しあわせというものは、高が知れている。” -『海鳴り』藤沢周平-