もう何年も前。家族と「ウッディの店」と名づけていた食料品店が近所にあった。店を守る老姉妹の妹がウディ・アレンによく似ていたから。古い都営アパートの1階にあり、小さな店の奥は慎ましい住居になっていた。近くのスーパー「サンディ」で安く仕入れたカップヌードルを定価で棚に並べていた。はっきりいって商才があるとはいえなかった。
‘ウッディ’は計算が苦手でレジも打てない。会計は必ず姉妹で対応した。運悪く姉の姿が見えないとレジの前で待たされた。その間、彼女は不安げにうつむき、蝶番をセロテープで補修した黒ぶちの眼鏡で壁をつくる。姉がやっと現れると「おーそーいー!」と甘えた声を出した。
ある日、泥棒が入った。奥の住居スペースで夕げの支度をしている間を狙われたらしい。決して多くないはずのレジの金が若い男に盗まれた。幸い2人に怪我はなかった。しばらくして再開したが、そのうちシャッターは開かなくなり、別の店になってしまった。